London Bridge Is Broken Down 1
London Bridge is broken down, My fair lady.
Build it up with wood and clay, Wood and clay, wood and clay,
Build it up with wood and clay, My fair lady.
Wood and clay will wash away Wash away, wash away,
Wood and clay will wash away, My fair lady.
Build it up with bricks and mortar, Bricks and mortar, bricks and mortar,
Build it up with bricks and mortar, My fair lady.
Bricks and mortar will not stay, Will not stay, will not stay,
Bricks and mortar will not stay, My fair lady.
Build it up with iron and steel, Iron and steel, iron and steel,
Build it up with iron and steel, My fair lady.
Iron and steel will bend and bow, Bend and bow, bend and bow,
Iron and steel will bend and bow, My fair lady.
Build it up with silver and gold, Silver and gold, silver and gold,
Build it up with silver and gold, My fair lady.
Silver and gold will be stolen away, Stolen away, stolen away,
Silver and gold will be stolen away, My fair lady.
Set a man to watch all night, Watch all night, watch all night,
Set a man to watch all night, My fair lady.
シークがいなくなったとして、日常生活にさして大きな影響は無い。彼と長い間、時間を共に過ごしている訳ではもちろん無かったし、何かを約束した訳でもない。彼との生活の大半は私による看護で成り立っていたようなものだし、それが必要なくなれば出て行くのも当然のことだろう。私と彼の間に、何かが生まれるような隙はなかった。元通りに戻っただけ。そのはずなのに。
暇が出来ると彼のことを考えてしまうのは何故だろう。私が思い描いていた憧れの君と同じ金色の髪を持つ青年。どこかゼルダ様と似通っていて、高貴なオーラを持ち合わせている。にもかかわらず存在自体は希薄で、命を落とすことに躊躇いもなさそうな。矛盾した存在だ。だから惹かれてしまうのだろうか。否、惹かれてなんていない。少し、興味を持っているだけだ。
悶々とした気持ちを抱えながらも、彼は当然私の前に姿を現すことはない。このまま、思い出になるのかもしれない。思い出になってしまえば、ゼルダ様と同じように慕っても良いだろうか。誰にでも無く許可を求める自分が滑稽だ。
再び、ひとりに戻ってしまった日常。一日が長いとばかり思っていたのに、気が付いたら一週間程が過ぎていた。デスマウンテンからの帰り、わざわざ私を迎えにきてくれたクスリ屋の兄ちゃんは、あれ以来おかしな様子を隠そうともしない。自分も忙しいだろうにも関わらず、いやになるほど私に構ってくれたり、優しくいたわってしてくれたりして違和感を抱くほど。確かに、この人は元々、変に私を心配してくれていた一人ではあるけれど、ここ最近程ではない。
日に一度、必ずクスリ屋に来るように言いつけた。私が向かうと、カウンター越しに様子を窺う。問診は欠かさないが、それ以上のことは何もしない。身体の調子がおかしくなることよりも、必ずここに来るーー生きていると確認することが重要とでも言いたげな様子。
そうかと思えば、私が帰る時、必ずこう言うのだ。
「調子が悪いときはすぐ言うんよ」
もう口癖と言っても良いのかもしれない。そろそろ慣れても良いはずなのに、それを聞くと、まるでいつか必ず私の調子が悪くなるのかと思って背筋をひんやりとしたものが這うのだ。いつもの冗談めかした口調ではなく、真剣味の帯びた冷たい声だからかもしれない。
何も無いんだと告げると、いつも不可思議に目を細めるのだ。動物のような細い瞳に何か探られているような気分になるのだけど、私はいつも何も言えなくなる。
けれど今日は何故だろう。するりと言葉が零れてくる。「何か心配事でもあるの?」我慢し切れなくなったのもある。自分の身体なのに、何で他人に管理されなくてはいけないのか。自分のことは自分で把握していたい。そもそも、私は、ゼルダ様とおじいさん以外にはあまり関わりたくないのに。彼が、おじいさんの息子じゃなかったら、こんなにおとなしくしてない。
私が尋ねたことに、クスリ屋のにいちゃんは答えない。それどころか黙り込んでしまう。答えたくない。そんな様子だったけれど、どうしてそれが許されると思うのか。私のことだ。そもそも知る権利は、彼には無いはずだ。散々お世話になってるから言わないけれど。
兄ちゃんは、私から視線を逸らす。誤摩化すように明後日の方向を見ているが、それは私を苛立たせるだけだった。視線を外したら負けだ。珍しくムキになった私は、彼の誤摩化しに屈服したくなかった。
どちらも動かない。拮抗したままの無意味な状況を動かしたのは、クスリ屋の裏口からの訪問者だった。カチャリ、キィー。扉が開いて、古びた蝶番が悲鳴を上げる。コツコツと、3本の足音が響いた。
「ヒヒッ、邪魔するよ」
「師匠!?」
訪問者ではない。一目見て分かった。彼女を見るのは久々だったが、分かる。訪問者ではなく、この店の正当な持ち主だ。
クスリ屋のオババと呼ばれる老婆は、クスリ屋の現店主が慌てて用意した椅子に腰掛ける。杖は取り上げられ、壁に立て掛けられた。お茶でも入れるためか、お湯を沸かしているクスリ屋の兄ちゃんの背に向かって、オババは楽しそうに言葉を投げかけた。
「答えてやると良いじゃないか、ヒヒッ。あの若者は暗殺者だって」
「師匠、いっ、きなりですね。それはまた……」
「お前が言いたかったことはそれだろう。シークと名乗る青年が本当にシーカー族かはさておき、あの民族は元々そういう種族さね」
何の前触れも無く投げかけられた言葉。元いた私達は二人して言葉を取り落とす。かろうじて、兄ちゃんの方は対応出来ているが、きっとそれは老女とのやりとりに慣れているからだろう。オババはそんな彼の様子を見て楽しんでいるに違いない。面白そうに笑ったあと、私に目を向けた。
「驚かないんだね、暗殺者って言っても」
黙ったままでいるからか、そんなことを言う。これでも驚いているのだけれど、でも確かにこの驚きはシークが暗殺者と言われたことよりも彼女がこの場にやってきたことによるものかもしれない。それに、戸惑いつつも腑に落ちてしまうのだ。彼が暗殺者だということに。
モンスターを倒すーー殺す手腕。針のような目立たない武器をこれでもかと隠し持っていたこと。移動旋律を奏でられるのならば、目立たずに侵入することなんて簡単だろうし、何より彼は誰かに付き従っていた。雇われているというと語弊があるかもしれないが、誓いを立てている人の障害を取り除くーーシークがそんな暗殺者でもおかしくはない。それどころか、言われてみれば、そうとしか思えなくなってしまう。
けれど、オババがおもしろがって言った次の言葉には、反論せざるを得なかった。
「んじゃあ、こういうのはどうだい? 今、あやつは魔王の下で従事しとるよ」
魔王の下で従事しているような人間じゃなかった。もっと、そう。ゼルダ様に近い人だと感じたのだ。根拠がないまま信じきってしまうのは危ないのかもしれない。だけれど、魔を帯びたものには思えなかったのだ。魔の眷属に成り下がっているのなら、きっと大妖精様だって、助けはしないだろう。ーー妖女のように思えたが、あの祭壇には王家の紋章があった。きっと間違いじゃない。
「……嘘です」
「おや」
私が慎重に言葉を発すると、オババは片眉をつり上げた。訝しむように私を見る。私を怪しんでいるのではなく、私の言葉が妙に確信を含んでいることに納得いかないという様子だ。
何処まで話せば良いのだろうか。何処まで話しても良いのだろうか。シークのことを何故知っているのか。シーカー族って、シークはそう名乗っただろうか。いや、名乗らなかった。この老女はまるで何もかも知っているような顔をして私を試しているが、鎌を掛けられているだけだったとしたらーーけれど、彼が魔王に付き従ってるなんてことを、そのままにしておきたくなかった。そんなはずは無い。冷静に、論理的に説明できやしないけれど、違うということだけは何故か確信を持って言える。
「だって、あの音楽は魔王のものではなかった! やさしくて、どこか懐かしくて哀しくて、まるで子守唄のようなーーシーカー族なんて、私は知らないけれど、魔に冒されてなんか無いと思う」
私がそう言うと、兄ちゃんは今度こそ心底驚いたようだった。言葉を失ったまま、その場に棒立ちとなる。何かを言おうと、二、三度口が開け閉めされたが。空気が情けなく逃げるだけで、音にならない。
オババも彼ほどではないが、驚いたようだ。目を見開いたあと、すぐに持ち直していつものようにヒヒッと短く笑いを零す。いつのまにか用意されていた熱いお茶を冷まさずに口に運ぶと、カップを持っていない方の手で、目を擦る。しわしわの顔。おもしろそうに目を細めるものだから、余計に目尻に皺が寄った。
「これは驚いたわい。あやつは、おまえさんの前で『ゼルダの子守唄』を奏でたとでもいうのかね」
「私はその、『ゼルダの子守唄』なんて知らない。けど、大妖精様を呼び出すときに、彼は」
「大妖精!! そりゃホンモノだ」
オババは私の言葉を遮って叫んだ。ガシャン、とカップを勢い良くソーサーに戻したものだから、陶器が酷く音を立てて刹那だけその場が静まり返る。少しの時間差で、カップに残ったお茶の跳ねる音。零れること無く、カップの中に収まる。
その一瞬の間に、師匠と弟子は示し合わせたかの様に視線を交差させていた。すぐにそれは外され、弟子の方は神妙そうに、私の身体を上から下まで眺める。異常を何も発見出来なかったのだろうーー毎日呼びつけていたのだから当たり前だーーホッとしたように息を吐く。
「ラナちゃん。彼が王家の者なのは間違いないよ。それが奏でられたのだから」
「そんなの、知ってたら誰でも奏でられるじゃない。元々王家の人間で裏切ったとしたら、」
先ほど庇っていたのは私なのに、音楽一つであっさりと信頼してしまう彼らが妙に疎ましくて逆のことを言おうとする。裏切ったなんて、ひとつも考えてないのに。天の邪鬼な自分に吐き気を催しながらも、顔色一つ変えない自分が恨めしい。
だけど、この私の言葉も最後まで言われることは無かった。オババが再び被せてきたからだ。
「ーー旋律は、力を持つ」
何を知っているのか。老女は私を射抜いたまま言う。抑揚の無い声は、逆に淡々と心に墨汁を落とすように印をつける。確信を抱いているなんて口調じゃない。当たり前のことを、どうして若者は知らないのか。そう、諭されているように思うものだった。
「知っているかはさして問題じゃない。旋律は、演奏者を自分で選ぶ。奏でることを許可されてるってことは、やっぱりあやつは王家の信頼を勝ち得てるんだろうよ」
「だけど、それはラナちゃんの安全を保証する訳じゃないんだよ。余計に心配だ。キミには、王家に狙われる理由がある」
『王家に狙われる理由』。そんなもの、私の記憶の中に心当たりなんてある訳が無い。最初の記憶が始まってから九年間。私はゼルダ様だけを盲信して生きてきたのだから。王家にーーゼルダ様に迷惑の掛かることなんて、する訳ないじゃない。
(きっと、この人たちは私の出自を知っているのだ)
唐突に、それを理解した。私の事情を少しばかり知っているだけじゃない。きっと、私が何故、何に追われてこの村の付近へやってきたのか。どういう経緯でおじいさんに拾われることになったのか。そもそもおじいさんは抜け目の無い人だ。私の身辺調査くらい済ませているに違いない。そして、きっと王家に狙われる理由は、私の生まれにあるのだろう。
(告げなかったのは、私のためーー?)
この場の勢いで、聞きたかった。聞いてしまいたかった。けれど、きっとおじいさんは何か考えがあって私にそれを隠したのだろう。その心遣いを無駄にしてしまっていいのか。違う。私が心配しているのはそんなことじゃない。聞いてしまったら、私の信じているものが全てガラガラと崩れていくんじゃないかってことだ。
だって、私はゼルダ様を心の支えに今まで生きてきたのに。ゼルダ様のために生きたいと、彼女のためなら命だって惜しくないと思い続けてきたのにーー
(ーーああ、でも。ゼルダ様にとって、私が死ぬ方がためになるなら)
しんでしまったっていい。
唇を動かさず、喉も振るわさず、私は口の中でそう呟いた。だから、聞こえていないとは思う。私の心の中も、思ったことも完全に見通せているわけではないとも思う。
けれど、緊張には気付いたに違いない。真剣な表情で私を見つめるだけだった彼は、コロリと表情を変える。今までの空気を払拭するかのよう、朗らかに私を見た。
「ま、些細なことだし、こんな世の中じゃあ、それよりも優先することは山ほどあるだろうけどね。王家にとっても」
その言葉に、オババは興醒めしたようだった。期待通りに物事が運ばなかったのか。予想通り過ぎたのか。弟子が甘いのに嫌気がさしたのか。それとも、私がもう少し強い人間だと思っていたのか。理由は分からなかったが、老婆は肩をすくめると、そのまま自分の根城に帰ろうとする。
その様子を見て、弟子は師匠の杖を取りに行く。椅子から立ち上がろうとするオババを支えつつ、立ち上がった彼女に先ほどまで壁にかかっていた杖を差し出した。
そのまま帰って行くかと思われたが、扉をくぐり抜ける前、最後にもう一度私だけを見る。彼女にしては珍しく、どうしようか悩んだ様子を見せたが、結局告げることにしたらしい。しわしわの口元を歪めた。
「狙われていようが狙われてなかろうが、奴にとっちゃおまえさんは価値があるだろうさ。あんたをあのじいさんのところに連れてったのは誰か、よく考えるんだね」
もう一度だけヒヒッとお得意の笑い声を漏らして、今度こそクスリ屋の老女は自身の根城へと戻って行った。
*
家に帰ってもやることはいつもと同じだ。軽く掃除をして、それが終わればお茶を入れて一息を吐く。いつもと同じように机の上に頬杖をついて、考え事をしていた。もう一度、ひとりで彼について考えたかったのだ。
私の記憶が始まるその日以前、私は王家と関わりがあったのだろうか。あったのだろう。それは今日の会話でわかりきったことだ。誰も明確に言葉にすることはなかったが、そうでないと説明が出来ない。王家との関わりーーそれも良い関わり方ではなくて、なにかに追われるようなーーこの時点で私は既に、自分が王家に追われ、逃げてきた人間なのだと決めつけていた。なにか犯罪者のこどもだったりしたのだろうか。
(そういえば……)
覚えていない過去をぼんやりと思い出そうとしているうちに、纏っていた衣装から良いとこの子だっていうのは分かったが、というおじいさんの言葉を思い出す。決定打になるような何かではない。私はそれを覚えている訳は無かった。記憶が無いのだから。誰にでも無く、言い訳のようにそれを繰り返す。
良いところの子どもであったなら、もしや王家の政敵ーーそれも考えたけれど、しっくりこない。ただの政敵相手を追い回すだろうか。追い回したとして、こうやって中途半端に逃してしまうなんて詰めの甘いこと、あのハイラル王家が許すだろうか。
(せめて、あとすこしでも覚えていたら)
そう考えたら、チリッと頭の中に痛みが走った。いつもそうだ。私があの空白の記憶を思い出そうとすれば、こうやって警告するように痛みが走る。私は覚えていないことで、自分の身を守っているに違いない。小さい頃はそう思っていた。今も、思っている。
なんとなく気だるい気持ちになった。紅茶の入っているカップはそのままに、寝台に横になる。彼が使っていた方の寝台だ。もともとおじいさんが使っていたもの。ここに背を預けたのは久々のことで、いつもとすこし違う景色になんとなく戸惑ってしまう。
それでも何を考えるでも無く、天井をぼーっと見つめていたら、ふと思い出した。あの涙型のロケットのことだ。開かないと、どうしてだかシークが知っていたあのロケット。どういった手段で糊付けされているのか、どうしてもあけることは出来なかった。ふとした拍子で壊れてしまうのもいやだったし、中身を見るのが怖かったのもあった。それで、今までそのままにしていたあのお守り代わりのペンダント。
わざわざ彼が、私のために開けてくれた、そのロケット。
まだ、その中身を見ていない。見なくては、と唐突に思った。それに私に渡してくれたときの、彼の手の柔らかな感触を思い出してーー
(ーー心が揺さぶられている)
いけない、と思った。彼に対してどうして、こうも意識をしてしまうのだろう。私が思っていることが迷惑なのかもしれない。ゼルダ様への信仰が揺らぎつつあるこのときに、わざわざ。(彼のせいで、ゼルダ様への強い気持ちが揺らされているのかもしれない)責任転嫁だとわかってはいる。けれど、止められない。王家に、というよりも自分への疑心から来るゼルダ様への罪悪感。それに比例するようにして膨らんでいく彼への興味。それを誤摩化してしまいたいのかもしれない。
これ以上考えてはいけない気がして、私は上体を起こした。(ロケットの、中身を見よう)いつも首から掛けている古美金の、紋様も何も無い雫型のペンダントのチェーンを外した。手のうちに収まるそれ。慣れてしまっていたから首が少し軽いことに違和感を抱く反面、手の中に収まるずっしりとした重み。
勢い良く開けてしまおうかと思ったが、その勇気はなかった。深呼吸をして心を鎮める。無意識に緊張していたらしく、どくんどくんといつもより早いペースで勢い良く血液を送り出していたポンプが少し落ち着いたような気がした。(何を見たって、動揺はしない)自分にそう宣言。それから、私はロケットを開いた。
ーーカチリ。外れる音がしたかと思うと、そのロケットはゆっくりと開いた。外界を拒絶するかのように、あんなに堅く閉じられていたのが嘘みたいに簡単だった。予想に違わずというべきか。本来の用途通りに、写し絵が入っているみたいだった。
色褪せてしまったのだろう黒っぽい茶色の写し絵が、時間の流れを示していた。もう九年も持っているのだ、仕方が無い。かなり薄れてしまっているが、今まで開けずにいたせいで日の光には晒されていない。そのおかげか目を凝らして見ると、高貴そうな女の子がふわりと笑っている姿だということが確認出来た。
色は当然ついていない。だけれど、それを確認した瞬間、私の目の前はその少女の微笑みのようにふんわりと色が広がっていた。きっと彼女は輝くような金糸の髪だったに違いない。
(ゼルダ様だ……!)
私には、すぐに分かった。その女の子は私が愛してやまない、そして国中が渇望しているゼルダ姫だと。私の記憶にあるよりも少し幼い。おそらく、撮影されたのは、私が一度だけお目にかかった、あのときより少し前だ。
ーー私は歓喜に震えた。
何が入っているのか、ずっと疑問だった。簡単には開かないよう、頑丈に閉められている様子に、きっと姫様の大事なひとの写真が入っているのだろう。私もその人を共に愛そう。そう思った。
けれど、こんなしあわせなことがあるものか!!
大切なゼルダ様の入ったロケットを、私は今まで大事にしてきたというのだ!!
ああ、ゼルダ様!!
やはり、私にはゼルダ様しかいない、シークはきっとそれを伝えるためにわざわざロケットを開けてくれたに違いない。私にはゼルダ様が一番で、おそらく彼にとってもそうなのだと。伝えたかったに違いない。だって、彼はロケットの中身を、どうやら知っていたようなのだから。
ぎゅっと、今まで以上に強い気持ちで、手のひらに食い込むほどにロケットを握りしめる。こみ上げてくる想いが、どうにも堪えられない。表現のしがたい気持ちが全身を駆け巡る。
とうとう私は、ベッドの上に涙を零した。そのロケットとは違い歪んだそれは、滲んで布に染みを作る。きっと、すぐに乾いてしまうのだろう。