"Who killed Cock Robin?" 1
I, said the Sparrow, With my bow and arrow, I killed Cock Robin.
Who saw him die?
I, said the Fly, With my little eye, I saw him die.
Who caught his blood?
I, said the Fish, With my little dish, I caught his blood.
Who'll make the shroud ?
I, said the Beetle, With my thread and needle, I'll make the shroud.
Who'll di
g his grave?
I, said the Owl, With my pick and shovel, I'll dig his grave.
Who'll be the parson?
I, said the Rook, With my little book, I'll be the parson.
Who'll be the clerk?
I, said the Lark, If it's not in the dark, I'll be the clerk.
Who'll carry the link?
I, said the Linnet. I'll fetch it in a minute. I'll carry the link.
Who'll be chief mourner?
I, said the Dove, I mourn for my love, I'll be chief mourner.
Who'll carry the coffin?
I, said the Kite, If it's not through the night, I'll carry the coffin.
Who'll bear the pall?
We, said the Wren, Both the cock and the hen, We'll bear the pall.
Who'll sing a psalm?
I, said the Thrush, As she sat on a bush, I'll sing a psalm.
Who'll toll the bell?
I, said the Bull, Because I can pull, I'll toll the bell.
All the birds of the air
Fell a-sighing and a-sobbing, When they heard the bell toll.
For poor Cock Robin.
光が収まった頃、わたしはそっと目を開いた。視界に映る光景は、今までいた時の神殿とは全く違う所にいて目をむいてしまう。
例えば時の神殿、たとえばカカリコ村の墓地、点在するように存在する謎の舞台のような石版がハイラルには各地に存在した。中心には王家に関係する証、聖なる三角形が描かれているその空間はなんとも神聖なように思えたものだ。
まさにそれと同じようなものが、わたしがたったいま立ちすくんでいる足下に存在し、またその周囲にはメダルのようなものがまるで時計のように縁状に浮いていた。空間は暗いけれど、スポットライトがあたるようにその中心を照らしていて、私はちょうどその真ん中に立っていた。
三角形やメダル以外の所には水が流れている。周囲の情景とあわせて、なんだか水の中にいるような錯覚に陥る。
うえにもしたにも、天井も底も無いようだった。吸い込むような暗闇だけが上下を支配していて、周囲をぐるりと見回すとぽつぽつと、足場が浮いていた。その足場にはどこからかともなく、滝が零れていて、それがまるで女神達の涙のようだと思った。
踏み出したら、落ちてしまうのだろうか。黒い空間を覗き込んでも底は全く見えない。もしかして、ここは別に宙に浮いているのではないのかもしれないという不思議な思いにとらわれた。周囲を見回しても目的のシークどころかだれもいない。このまま立っているだけではダメだと思って、けれども何をしたら良いのか分からずキョロキョロする。
思い切ってここから落ちてみるしか無いのだろうか、いや、もしかして、歩けるのだろうか。そう思って足を踏み出したしてみようとした瞬間、上から音が聞こえた。
「――――ろ!!」
えっ、と思って上を向くと、緑の衣に身を包んだ人間が落ちてきていた。「避けろ、ぶつかる!!」と大きなこえで叫んだのが今回は聞き取れた。
下を向いたまま落ちている彼と、バッチリ目が合って、私はどうしたら良いのかわからずに、三角形のてっぺんの先にある緑色のメダルへと飛び移った。彼は、中央部、丁度、聖三角のあたりに一回転をしてエネルギーを逃がしながら着地をする。それを見届けて、三角形へと戻った。
「下敷きにしなくてよかった! まさか、聖地にひとがいるなんて、思わないだろ。……ん? あれ、きみは」
緑色の衣装を纏った青年が目の前にいる。なにやらいろんなことを言いながら、よいしょと立ち上がる。そして、きちんとこちらを見てその青年ーーリンクは目を丸くした。腰を屈めて私を見つめる。
「やっぱり! カカリコ村にいた――あの闇の神殿のとき」
驚いたのは私も同じだ、そして同時に少しの失望を感じる。だって、私が望んでいたのはシークなのだ。この聖地で私が出会うべきなのはシークだと無条件に思っていたのだ。
「ええ。覚えているの?」
「俺を知ってるってことは……あの時代のきみであってるのかな。それだと都合がいいけど。あのときシークを置き去りにしちゃったんだよなあ。アイツがあれだけ油断を見せるの、珍しかったから」
前半は独り言のように呟いて、後半は私に向かって言った。何を考えているのか読めない笑顔はそのままに、へらりと勇者は笑った。
「いやあ、なつかしいな。ここ、もしかして光の神殿? 道理で」
そう言って、リンクはあれ? と腑に落ちないような表情をつくる。
もっと早くその表情が来てもおかしくなかったため、その程度では動揺しない。
「じゃあなんできみはここにいるんだ? 探し物――で簡単に入って来れる場所じゃないよなあ」
「ゼルダ様に言われたの、シークがここにいるって。私はシークを、」
(私はシークを、どうしたいのだろう。彼に何をしてもらいたいのだろうか)
何も考えず、勢いでここまできてしまったことに気が付いて私は動揺した。何かを思ったから、ここに来たことには間違いないのに。誤摩化すようにふにゃりと笑ったけれど、この勇者には全て見透かされている気がしてならない。
紡がれなかった続きに触れること無く、彼は前半部にだけ反応する。
「ゼルダが? それなら本当なんだろう。それに、『シーク』にまた会えるなら、そうだな。俺もついていくかな」
「えっ、だって」
「俺、あの時空に帰りたいんだよ。居場所なんて無くても、ゼルダの傍に在りたい。それだけなんだよ、俺が持ってるものなんてさ。きみといれば、またあのゼルダに会える気がして」
リンクについてきてもらうのは、正直な所心強い。でも、何故か私は一人で行かなければいけないような気がしたのだ。それに、『シーク』に対して、何か含みを持った言い方をした気がする。彼と一緒にいて良いのだろうか。
「俺を連れて行くなら、役に立つって約束するよ。魔物……は出ないだろうけど、用心棒にはなれるし、なにより謎解きには慣れてます」
ニッと笑って、まるで宣伝文句のようにそう言って、リンクはぐるりと周囲を見回した。下や上を覗き込むように見たりもして、そうして、彼は懐から何かを取り出した。どこかでみたことのあるそれ。不思議な蒼さを持つオカリナだった。
「ん、やっぱりこれは初心に戻って子守唄か。この旋律もひさしぶりだな」
そう言いながらも、何度も何度も奏でたであろう、その指使いは非常に手慣れていた。どこかで聞いたことのある音楽が流れる。愛に満ちたその曲は、シークが大妖精様のところで奏でていたものだ。あのときも、どこか懐かしいと――
ふと、『旋律は力を持つ』ということばを思い出した。たしか、旋律が人を選ぶ、とも。
一通り奏で終わって、リンクは微笑んだ。「ビンゴ」その呟きと同時に、周囲にあったメダルが光り出した。しかし数秒経って、その光は収まって、何が起こるのだろうかとわくわくしていた気持ちは裏切られたように思った。
「ほら、こっち」
リンクがそう言って、腕を引っ張られてようやく、私は紫色のメダルが未だ光ってることに気が付く。彼は迷いもせず、その紫色の光に飛び込む。腕を掴まれたままの私も当然、一緒にそこの光の中に引きずられる。
そのまま、ブルーのクリスタルのようなもののなかに閉じ込められる。私達は、その場から、掻き消えた。
そこは真っ白な空間だった。
結晶がすぅっと消えていって、私達は自由の身になった。どちらが前か後ろかも分からない、霧がかかったかのようになにも見えない空間で、私はほぅっと思わずため息をついてしまう。
唯一姿を確認出来る隣のリンクも、さすがに困った顔をしている。いつも何を考えているのかよくわからない笑顔を浮かべているイメージがあったので、少し新鮮だった。
「とりあえず、進むしかないかな」
リンクがそう言って、私も頷く。ここで立っていても埒があかないだろうと思ったのだ。歩き出すと、「あ、ちょっとまって」と声をかけられて、手を握られた。先ほどのように乱雑に腕を掴まれるのとはまた違うその感じ。自分の手の平に、ひとの手の平が重なることがあるのだと、思いもしなかったから奇妙な気分だった。私の戸惑いを感じたのか、リンクは苦笑する。
「迷子防止だ」
はぐれることは無いだろうと漠然と考えていたけれども、彼の言うことも一理あるから黙って頷いた。
(嘘。むしろはぐれてしまえば良いと、そう思ったのでは……)
心のこえが自分の思考に口出しをする。
首を横に振ることでその考えを追い出して、私はぎゅっとリンクの手を握り返した。それで気が付いたけれど、リンクの手には温度がなかった。グローブをつけているからだろうかとも思ったけれど、そうではないのだと急に気が付く。この人は、ほんとうに生きているのだろうか。この空間は何でもありな気がする。リンクが消えてしまった、リンクが存在しないはずの私たちの時空で、私達が出逢ったこと自体が不可思議だ。否、そもそも時空という感覚が正しいのかすら分からないのだ。
チラリと彼の横顔を盗み見る。なにも分からなかった。そもそも光も、それを遮るものも何も無いのに、彼の横顔が翳ったような気がした。
少し先に、ぬっと現れるようにして真っ白い壁が見える。扉があった。
扉にはシークの、いやシーカー族の紋章が縁取ってあって、私達は二人揃って息を飲む。ここだ、ここに違いない。そう思うと、駆け出さずにはいられなくなって思わず、繋いでいたリンクの手をと振りほどく。
「待て!」
罠かもしれない、と叫んだ彼の声に冷静になれば良かったのだ。けれど、夢中になっていた私には届かずそのまま扉の前へと走った。
――刹那。
扉の周囲を人間一人分のスペースを残して、炎が囲む。
つまり、私は炎に囲まれて後戻りが出来ない。リンクの助けも望めない状況だ。私を捉える炎は極近く、熱に焼かれて汗も蒸発してしまうほどだ。
「……俺はこっちでそれを消す方法探してみる、だから」
「わかった、私は進む」
悔やんだような声色に、用心棒になるってことばは本気だったのだと、今更ながらに悟る。すこし申し訳なさを感じたけど、それを悟らせないように顔を背けて、ドアノブに手を掛けた。
「それじゃあ、無事で。お互いに」
「きみも、気をつけて」
彼の言葉を受けて、私は扉を開いた。
さほど広くはない空間、金色の長い髪の毛の存在を眼に留めた。